2012年6月9日土曜日

伝承詩としての「骨のうたう」


◆戦争で夭折した詩人・竹内浩三の代表作「骨のうたう」が、実は親友の中井利亮によって推敲(改変)されて世に送り出されていた事実は、今や関係者の間には広く知られている。

しかし、このことがまだあまり知られていなかった1984年当時、作家・詩人の足立巻一は「骨のうたう」の原稿が現存せず、中井本人に尋ねても判然とせず、成立年代も不明であることを「かねてから感じていた困惑が深まる」としながらも、次のように書いている。

「そこで、わたしは思うのだ。「戦死やあわれ」に始まる「骨のうたう」は、今度の戦争が生んだ伝承詩であり、それでよいのではないか、と。」  (「人の世やちまた」1985年・編集工房ノア)

竹内本人の作家性ではなく、或る一個の戦争詩が伝えられていったという事実そのものを重視する場合、この足立の解釈も「有りは有りかな」という気もする。 

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