2012年6月16日土曜日

人類滅亡期と次の高等動物(メモ)



◆最近図書館や資料館で古い雑誌や資料を閲覧する機会が多いのだが、どうも逆に中々新鮮で、元々の目的を離れて記事や広告に目が止まってしまう事が多い。頭痛薬の「ノーシン」って戦前からあったんだなあ、とか、精力剤だの、「強力治淋新薬」だの、ソッチ系の広告多過ぎるなあ、とか。

◆そんな中、戦前の総合雑誌「改造」1931年6月号の「新刊紹介」なるコーナーに掲載の、次のような書籍。

「人類滅亡と次の高等動物」村上計二郎著
“人類は暫時に滅亡して滅亡し次の高等動物はカンガール族より出ずるだろうと説く研究(東京日本橋東京駅東口角・萬里閣・値一円八十銭)”

なんだこりゃ 。「カンガール族」・・・カンガルー??

・・・有袋類が人類に代わる知性として登場するという発想は、どうも尋常ではなく思える。ちょっと手塚治虫っぽいとも思う。「来るべき世界」や「鳥人大系」っぽいノリだ。読んでみたら全然違うんだろうとは思うが。
敢えて探そうと迄とは思わないが、そのうちどこかで出くわしたら読んでみたい。


◆なお、著者の村上計二郎は如何なる人物だったのかは不明。
しかし、国立国会図書館サーチなどのネット検索によれば、「幽霊の実在と冥土通信」(1927年・日本書院出版部)「店員読本」(1930年・第一出版社)「非常時対応 転業と転職」(1938年・実業之日本社)等々、オカルト系から実用書まで、数冊の著作があるようだ。
大衆向けに手広く手掛けるタイプの作家かライターだったのだろうか。
(馬場鍬太郎との共著で「南支五省の現勢」(1939年・三省堂)なる本まである。なお馬場は東亜同文書院教授を務めた人物。さすがにこれは同姓同名の別人だろうか?。うーむ。)

2012年6月9日土曜日

伝承詩としての「骨のうたう」


◆戦争で夭折した詩人・竹内浩三の代表作「骨のうたう」が、実は親友の中井利亮によって推敲(改変)されて世に送り出されていた事実は、今や関係者の間には広く知られている。

しかし、このことがまだあまり知られていなかった1984年当時、作家・詩人の足立巻一は「骨のうたう」の原稿が現存せず、中井本人に尋ねても判然とせず、成立年代も不明であることを「かねてから感じていた困惑が深まる」としながらも、次のように書いている。

「そこで、わたしは思うのだ。「戦死やあわれ」に始まる「骨のうたう」は、今度の戦争が生んだ伝承詩であり、それでよいのではないか、と。」  (「人の世やちまた」1985年・編集工房ノア)

竹内本人の作家性ではなく、或る一個の戦争詩が伝えられていったという事実そのものを重視する場合、この足立の解釈も「有りは有りかな」という気もする。